—— 対外アピールと裏腹の「残業代ゼロシステム」、そして労基署のガイドライン違反 ——

未払い賃金問題において、住友生命は「PCのログイン・ログアウト時刻を最大の労働時間とみなしている」「PC遮断後に業務をしたのであれば、自己申告できたはずである(申告を阻害する事情はなかった)」と主張し、残業代の全額支払いや遅延損害金の支払いを拒否しています。

しかし、会社が 日本経済団体連合会(経団連)の公式資料等において「働き方改革の好取組」として対外的にアピールしている「PCの一方的な強制遮断システム」 の存在を踏まえると、この「自己申告できたはず」という主張は物理的にも法的にも客観的合理性を欠く説明であることがわかります。

1. 経団連でアピールした「強制遮断」と「自己申告強要」の矛盾

住友生命大阪人事室長は「自己申告すればよかった」と労働者に責任を転嫁しています。しかし、業務システムや勤怠管理がPC上で行われている現代において、 「会社によって強制的にPCをシャットダウンされた後」に、一体どうやって労働者がPCを開いて自己申告を行えるというのでしょうか。

対外的(経団連など)には「PCを強制遮断して残業を抑制している」と自社のクリーンさを誇示しておきながら、内部の労働者に対しては、PC強制ログオフ後に「PCを使用しない業務(備品の運搬、書類整理、コピー等)」を強いた挙句、「申告しなかったお前が悪い」と責任を押し付ける。「PCを物理的に使えなくしておきながら、PCでの申告を求める」という、適正な労働時間の申告を構造的に困難にするシステムこそが、この職場のリアルな姿でした。

2. 厚労省「労働時間管理ガイドライン」との完全な矛盾

この「強制ログオフと自己申告の強要」という構造は、厚生労働省が定めている公式ルール 『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』 に明確に違反しています。

【厚労省ガイドラインの明記内容】

  • 「使用者は、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。」
  • 「時間外労働時間の削減のための社内通達等(中略)が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認 するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。」

すなわち、「働き方改革」や「PC強制遮断」といった会社の時間外抑制措置が、かえって労働者の正しい労働時間申告を物理的・心理的に阻害(サービス残業を誘発)しているのであれば、それはガイドライン違反として直ちに是正されなければならない違法状態です。

3. ガイドラインを無視した労働基準監督署の不作為

最も悪質なのは、労働行政(栃木労働基準監督署)の対応です。 労働者が「PCのログオフを強制された後に業務を行っていた」「IDカード等の別の客観的記録(入退室記録)を調べてほしい」と訴えていたにもかかわらず、労基署は会社が主張する「自己申告がなかった」という言い分をそのまま受け入れました。

労基署は、上部機関(厚労省)が定めた上記のガイドラインに従い、 「会社のPC強制遮断システムが、適正な自己申告を阻害する要因になっていなかったか」「PC以外の客観的記録(IDカードや複合機のログ)と矛盾がないか」を徹底的に調査する義務 がありました。しかし労基署は、「会社が見せてくれなかった」という理由だけで調査権限を封印し、企業が一方的にPCログのみで算定して行った「供託」を隠れ蓑にして処理を終了させました。

結論

住友生命の「自己申告を阻害する事情はなかった」という主張は、 自らが経団連等の場で公言しているPC強制遮断の仕組み と、厚労省ガイドラインの存在によって完全に論理破綻しています。

未払い賃金が解消されない真の原因は、労働者が申告しなかったからではありません。 「大企業が『PC強制遮断』という物理的な口封じを行い、それを取り締まるべき労基署が、自らのガイドライン(申告阻害要因の調査義務)を完全に無視して調査を放棄したから」 です。ここでもまた、法の番人であるはずの行政の判断停止が、 大企業の不適切な時間管理を実質的に追認する装置として機能しています。

経団連 https://www.keidanren.or.jp/policy/wlb/data/ap02650.pdf

※個人情報流出防止の意味でPrintScreen無効化されており、結果として職員自身の給与明細も画面でしか確認できず『同意なき給与天引きを示す給与明細』を労働行政に持ち込みにくい