―― 感情論を排し、国のルールと照らし合わせる ――
極力、感情を排除し、この事件全体を客観的記録としてまとめようとしていますが、なにぶんにも被災者側の立場からの記述であるため、所々で「悪質」という表現、またはそう捉えられる言い回しが残っているという自覚もあります。
ただ、これが単なる「被災者側の目線(感情)だから悪質と思える」ものなのか。この点についても、他の事象と同様に「客観的基準」を用いて見直す必要があると考えます。
以下は、労働行政が公式に定めている 「悪質さ」の定義 と、本件事案の実態との照合です。
1. 労働行政の内部マニュアルが定める「重大・悪質」の定義
労働基準監督署の業務方針を定めた内部マニュアル『監督業務運営要領の改善について』には、是正勧告と「悪質さ」の関係について明確なルールが記されています。
「 重大・悪質な法違反があるものについては、是正しない場合には司法処分に付することがある旨を必ず口頭でも警告する。」
「再監督による是正指導や是正督促等を行ったにもかかわらず、法違反を是正しない場合等には、(中略)司法処分に付する。」
(出典:監督業務運営要領の改善について)
労働基準監督署の最大の武器は「是正勧告(行政指導)」ですが、指導を受けたにもかかわらずそれを全社的に是正せず、違法状態を放置・継続する行為は、行政指導の枠を超えて 「司法処分(刑事罰・書類送検)の対象となる重大・悪質な行為」 として客観的に位置づけられています。
2. 内閣総理大臣答弁が示す「悪質企業」の要件
平成29年1月31日の参議院予算委員会において、大企業の労働関係法令違反に対し、内閣総理大臣は以下のように「悪質の基準」と「国としての対応方針」を公言しています。
「賃金不払での残業といった法令に違反することは決して許してはならないと考えています。企業全体で同様の労働基準法違反が認められる場合は、労働局や労働基準監督署が本社に立入調査を実施して監督指導を行い、全社的な改善を図らせています。また、悪質な企業に対しては、捜査の上、書類送検を行うなど厳しく対応していく考えでございます。」 (参考:安倍総理答弁)
朝日新聞の報道1通り、同社は2019年に京都支社で労基法24条違反の是正勧告を受けながら、本社を通じて全社の給与控除システムを改めず、小山支社でも同様の法違反(同意なき給与天引き等)を継続させていました。この実態は、まさに総理答弁が指摘する 「企業全体で同様の違反が認められる状態」 であり、国家方針として 「本社への立入調査」や「書類送検(悪質な企業としての処罰)」 が行われるべき客観的要件を完全に満たしています。 ⇒行政の「二重基準」が証明する不作為
3. 国の答申書(情報公開)が定義する「悪質な法人」
当サイトで検証された通り、行政は企業に関する不都合な情報を黒塗り(非開示)にする際、全国共通で以下の定型文を言い訳に使用しています。
「当該法違反等が悪質であると捉えられることにより、(中略)当該法人が 是正意欲を持たない悪質な法人である との誤った印象を持たれるおそれがある」 (参考:総務省データベースの答申書が証明する「完成された隠蔽の雛形」)
この行政独自の論理を裏返せば、労働行政において 「悪質な法人」の客観的定義とは、「法違反に対して是正意欲を持たない(=是正勧告を受けても直そうとしない)企業」 を指していることがわかります。 2019年12月に京都支社で是正勧告を受けながらそれを放置し、小山支社で同様の処理を続けていた同社は、誤った印象などではなく、客観的事実として行政自らが定義する 「是正意欲を持たない悪質な法人」 の定義に収まると考えるのが自然です。