—— 明白な違法行為を黙認した大阪労働局の「記録不在」 ——

住友生命が、労災による就労不能状態にあった労働者の退職処理において、退職日(8月17日)から1か月以上が経過した9月21日に至ってから「自己都合退職」として離職票を新規発行した事実。 これは、事業主に「離職の翌日から10日以内」の届出を義務付けた雇用保険法第7条に対する明白な違反行為であり、同法第83条において「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」と定められている厳格な違反状態です。

通常、労働者の生活基盤(失業手当や健康保険の切り替え)を脅かすこれほどの長期間の届出遅延が発生した場合、管轄の公共職業安定所(ハローワーク)は企業に対して厳しく理由を問い、行政指導や是正を求めます。

しかし、本件において行政はどのような対応をとったのか。 大阪労働局長名で発行された「保有個人情報の開示をしない旨の決定について(令和5年8月17日付)」という一枚の文書が、労働行政による「大企業への見逃し」の実態を証明しています。

4. 雇用保険法第7条違反(離職票の提出遅延)

1. 労働者が求めた「指導記録」の開示

労働者は大阪労働局に対し、以下の内容の公文書開示請求を行いました。

「ハローワーク大阪東による住友生命保険相互会社に対する雇用保険法施行規則第7条により、労働者の離職日の翌日から10日以内に、ハローワーク大阪東に雇用保険者資格喪失届を提出しなければならないところ行わなかったことによる指導もしくは罰則等を行った際に作成された文書・資料一切

つまり、「1か月以上も離職票の発行を遅延させた住友生命に対し、ハローワークがどのような指導や罰則を行ったのか、その記録を出してほしい」という極めて正当な要求です。

2. 大阪労働局の回答:「開示対象に係る情報を保有していない」

この開示請求に対し、大阪労働局が下した結論は**「全部を開示しない」**という決定でした。 そして、その理由として以下の1文が記載されています。

「開示対象に係る保有個人情報を保有していないため。」

行政機関が企業に指導や罰則を行った場合、公文書管理のルール上、その経緯や内容は必ず記録として保存されます。 したがって、「指導を行った文書を保有していない」という大阪労働局の公式回答は、「ハローワーク大阪東は、住友生命の明白な雇用保険法違反(1か月以上の届出遅延)をシステム上で認識していながら、ただの一度も指導や注意、罰則の適用を行わず、完全に黙認(スルー)した」という客観的事実の自白に他なりません。

3. 労働行政が完成させた「無責任のトライアングル」

この大阪労働局の公文書の存在により、本件に関与した労働行政がいかにして大企業を守り抜いたか、その全容が明らかになります。

  1. 【ハローワーク大阪東(本社管轄)の不作為】:1か月以上の遅延という雇用保険法違反の離職票が提出されても、何の指導も行わずにそのまま受理した(=違法の黙認)。
  2. 【ハローワーク栃木(労働者管轄)の不作為】:労働者からの「同意なき自己都合退職である」という異議申し立てに対し、法的な職権調査を放棄し、5か月間も放置した(=事実認定の回避)。
  3. 【ハローワーク栃木担当者の失言(企業擁護)】:退職届がないことの異常性を指摘する労働者に対し、「退職者と連絡がつかなかったからではないか」と何の根拠もなく企業側を代弁し、「特別扱いか」と問われて沈黙した。

結論

法律は、弱い立場の労働者を守るために「10日以内」という厳格な期限と罰則を設けています。 しかし、相手が大企業となった途端、行政はその法律を適用することを放棄し、「指導の記録すら残さない」という形で企業の違法行為を不可視化しました。

「指導記録が存在しない」というこの不開示決定通知書は、日本の労働行政において、大企業のコンプライアンス違反はいかにして公的に「なかったこと」にされるのかを示す、極めて生々しく、そして冷徹な歴史的記録です。