総務省を経由した行政相談の回答において、厚生労働省は「調査や判断は所管の労働基準監督署が行う」と明言し、現場の梯子を外した。
しかし、朝日新聞でも報道されている通り、重大事案には「本省扱い」というルートが存在する。また、現場の労基署の監督官マニュアル(監督復命書等の運用)が示す通り、本省が完全に責任から逃げ切れるような制度構造にはなっていないことは、いまさら推測するまでもない事実である。
では、追及の手が本省にまで廻ってくるリスクを冒してまで、守りたかったものとは何だったのか。
本件事案との直接的な因果関係について、ここで断定はしない。
しかし、行政の「不作為の動機、なぜ彼らは生命保険会社一社を裁けないのか」を考察する上で、極めて重要な客観的事実が存在する。
住友生命を退官後の再就職先(顧問)とした元・労働局長が、同時に「何の仕事(代表取締役)」をしていたか。確認できる公的記録と事実関係だけを、ここに纏めておく。
■ 労働行政トップの指定席「株式会社国際研修サービス」
株式会社国際研修サービスは、外国人技能実習生などを対象とする損害保険の代理店業務を主たる事業としている。この一企業の歴代代表取締役には、元・東京労働局長、元・大阪労働局長、元・宮城労働局長、元・厚生労働省安全衛生部長など、労働行政のトップ官僚たちが次々と就任(天下り)している事実がある。
■ 巨大保険マネーと天下り官僚の交差点
同社が代理店を務める「外国人技能実習生総合保険」の引受会社には、三井住友海上火災保険をはじめとする巨大保険グループが名を連ねている。 そして、元・大阪労働局長であった人物は、この国際研修サービスの代表取締役を務める前後の時期において、「住友生命の顧問」にも就任している。すなわち、労働行政のトップ官僚の再就職先(利権のハブ)と、巨大な生命保険・損害保険マネーは、完全に一つのネットワークとして結びついているように見える。
■ JITCO(国際人材協力機構)と利益相反の構造
この巨大な保険の契約者となっているのが、同じく労働行政からの天下り先となっている公益財団法人 国際人材協力機構(JITCO)である。 この構造下において、現場の労働基準監督署や労働局が、天下り先であり巨大な保険利権を構成するスポンサー企業(住友生命等)に対し、「助成金の全社的停止」や「公共調達からの排除」に直結するような致命的な法令違反の認定を下せるはずがない。 さらに図が示す通り、彼らはこの利権システムを脅かす労働争議に対しては、公益機関(JITCO)の立場すら悪用し、労働組合からの脱退工作(労組潰し)という弾圧にまで手を染めていた事実がある。
■ 結論
繰り返すが、これらが本件の個別事案に直接影響を与えたと断定するものではない。
しかし、「なぜ厚生労働省は、客観的証拠を前にして自らの判断を停止させ、現場の梯子を外してまで処理を『完了』させたのか」という最大の謎は、この「労働行政トップと巨大保険ビジネスの利権構造」という事実を補助線として引くことで、初めてすべての辻褄が合うのであった。
また、奇しくも、不条理な取り調べの実態を世に告発された『正義の人』として知られる元・厚生労働省トップの村木厚子氏におかれましても、退官後のセカンドキャリアにおきましては、古巣の労働行政と「なめらかな依存関係」にある巨大保険グループの役員席へと順当にお納まりになり、この盤石なエコシステムの維持に貢献されたご様子です。
⇒SOMPOホールディングス