本件における会社側の説明を整理すると、「やらせていない」という明確な否定を除けば、 最終的には

・把握していない
・わからない
・判断できない

といった形に収束している。

これらはいずれも、事実関係の認否を回避しつつ、評価を留保する説明である。

このような説明が維持される場合、行政側においても、その前提のもとで判断が示されないまま、処理が終結する構造が生じている。 実際に、本件においても「業務起因性に関して当方では判断ができません」との説明が繰り返されていることが確認できる。 つまり、 企業側の制度理解の程度によっては、どのような説明が行政判断が示されない状態につながる方向に作用するのかという点まで含めて、対応の在り方に影響し得る構造が存在している。

その結果として、行政による判断が示されないまま、本来であれば、助成金停止等を含む行政処分の対象となり得る事案であっても、その前提となる評価が示されないまま、個別案件として民事的解決に委ねられる状況が生じている。

このような取扱いは、労働法令が本来予定する労働者保護および安全確保の実効性という観点から見て、これは実質的な法の実効性との関係において課題が顕在化している

結論

客観的事実(労災認定)が存在するにもかかわらず、加害側の「わからない」の一言で行政が矛を収める。制度の運用が、結果として当事者間の力関係の影響を強く受ける形となっている。

同社においては過去にも、業務中のバイク事故で入院した営業職員に対し、会社側が「入院中なので過重業務は継続していない」と主張して労災不支給となった事件(岡山支社労災不支給事件)が存在します。この事件では、被災者側が行政訴訟と民事訴訟を経て企業の「安全配慮義務違反」を確定させるまでに、実に16年もの歳月を要しました。 行政が判断を停止する仕組みのもとでは、一個人たる労働者が莫大な時間と労力を費やして司法の場で再びゼロから争うことを強いられます。

過去にも国会で追及された「労働行政の及び腰」