―― 保有個人情報開示文書が示す行政の機能不全と責任逃れの構造 ――
労働行政の窓口は、労働者や企業に対して法令や制度の正しい運用を指導・助言する専門機関です。しかし、本件事案において開示された文書を読み解くと、その「専門性」が完全に欠如し、面倒な事案を他部署へ押し付ける「責任逃れのシステム」が作動していた事実が客観的に証明されます。
大阪労働局(大阪助成金センター)が開示したヒアリングシート(1等)には、栃木労働局の担当課長補佐から大阪労働局への「電話連絡(引き継ぎ)」の記録が残されています。表向きは「管轄局への情報提供」に見えるこの文書ですが、事実関係を照らし合わせると、行政の深刻な機能不全が浮かび上がります。
1. 基本的制度すら即答できない「専門性の欠如」
記録によれば、栃木労働局の担当者は、被災労働者から「在職中に内定を受けており、助成金の不正受給に当たるのではないか」1という相談を受け、それをそのまま大阪労働局へ転送しています。
しかし、「特定求職者雇用開発助成金」の制度において、 「雇入れ時の年齢が45歳以上の障害者等の場合、在職中の紹介であっても特例として支給対象となり得る」 というルールは、助成金や障害者雇用を所管する労働局の担当者であれば、当然把握しているべき基本的事項です。 本来であれば、栃木労働局の担当者がその場で「あなたの場合は45歳以上の特例に該当するため、制度上不正には当たりませんよ」と即答・説明すれば、その場で解決(完結)していたはずの事案です。
しかし現実には、行政官はそれに気づかず(あるいは確認もせず)事案を他局へ転送し、後日、 「専門家ではない労働者本人が自ら国の制度を調べて合法であることに気づき、自ら通報を取り下げる」 2という、行政として極めて不自然な事態を招いています。
2. 管轄外への転送に隠された「責任逃れ」
なぜ栃木労働局は、自らマニュアルを確認して回答しなかったのでしょうか。その動機は、同ヒアリングシートにわざわざ付記された「要注意情報」から推認されます。
「本人は非常に几帳面で、電話内容等をレコーダーに録音したりしており、当時の記録も残している。」
当時の栃木労働局は、自らが責任を負うべき「事業主による障害者虐待(合理的配慮の不提供など)」の調査について、積極的な事実確認を行わず「不明(問題なし)」として処理を終結させようとしていました。 その状況下で、客観的証拠を突きつけてくる労働者からの新たな「助成金の疑問」に対し、真正面から向き合うことを避け、 「証拠を持つ通報者の対応は、助成金の管轄である大阪労働局に任せよう」 3と、事案のたらい回しを行ったとみるのが極めて自然です。
結論:労働者の自衛と行政の不作為
専門知識を持たない労働者が自ら行政の作ったルールを調べ、自らの誤りを正して誠実に通報を取り下げる一方で、専門機関である行政は自らが扱う制度の基本すら把握せず、証拠を持つ通報者を「クレーマー」とみなして他局へ転送する。
この一枚の文書は、日本の労働行政がいかに「当事者と向き合うこと」を避け、事なかれ主義に基づく組織間の押し付け合い(責任逃れ)を行っていたかを示す、反論不可能な歴史的記録と言えます。
Footnotes
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住友生命の本社が大阪であるため ↩