診断書の「返送」と退職処理に関する客観的検証
—— 「傷病欠勤」の記録と解雇制限(労基法19条)の適用をめぐる構造 ——
2021年7月20日メール全文(被災者)に対する会社返答2021年7月26日メール全文
住友生命は、労働者が「無給で、自身の生活時間を削り、自腹をきり、この会社に尽くすことができなくなりました」と窮状を訴えたメールに対し、労働者から提出された 「診断書」を「必要ない」として返送する という対応を行っていることが確認できます。
会社側(勤労部)は、労働組合宛ての公式回答において、診断書を返送した理由を次のように説明しています。
【住友生命勤労部からの回答】 「退職までの期間は、傷病欠勤はなく有給休暇を取得しており、有給休暇取得後そのまま退職されましたので、診断書は返送しております。」
すなわち、「本人は業務上の疾病で休んだ(傷病欠勤)のではなく、有給休暇を消化して退職したため、診断書は不要であった」という主張です。 しかし、当時の総務部長が労働者宛てに送信した実際のメールと照らし合わせると、この「有給休暇であった」という説明と客観的記録との間に、重大な不整合が存在することが確認できます。
1.メール記録が示す「診断書返送」の経緯
労働者は当時、体調の悪化を理由に「明日より治療に優先させていただきたい」1と申し出た上で、診断書を会社に送付していました。これに対し、2021年7月26日付のメールで総務部長は次のように返答しています。
【2021年7月26日付 支社総務部長からのメール】 「残っている年休および夏季休暇を消化した翌日付(8/17)で設定することが考えられるかと思いますがいかがでしょうか」 「尚、 年休消化後のご退職(連続での傷病欠勤とならない)なので、診断書は特に必要ありません。 先にお送りいただいた分と併せご返送します。」
このメール履歴は、労働者が「治療のための休業(傷病欠勤)」を明確に求めて診断書を提出した事実に対し、会社側が組織的な論理によってそれを上書きしようとした経緯を示しています。
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「連続での傷病欠勤とならない」という処理
総務部長の「連続での傷病欠勤とならない」という文言は、労働者が直面している療養の必要性を、会社の管理記録上において「傷病による休業」としては扱わないとする判断を示しています。 -
診断書の受領拒否と返送
会社側は、病状を証明する客観的証拠である診断書について「必要ない」とし、労働者へ返送しています。これは、労働者の療養実態の客観的確認を留保し、有給休暇の消化という事務処理へと枠組みを移行させたことを意味します。
2. 「有給休暇」処理がもたらす法適用の回避
なぜ会社側は、「年休消化後の退職なので、診断書は特に必要ありません」として、有給休暇の消化による退職処理を優先したのでしょうか。
その背景には、「労働基準法第19条(解雇制限)」 の存在が関わってきます。 労働基準法第19条は、「業務上の傷病による療養のための休業期間中」の解雇(および実質的な退職強要)を絶対的に禁止しています。
仮に労働者の申し出通りに診断書を受理し「傷病欠勤」として記録されていた場合、後にそれが労災と認定された際、その期間中の退職処理は労基法19条違反の要件を満たす可能性があります。 事後的に700日の就労不能が公的に認定された本件事案は、まさにこの解雇制限の適用が問題となるケースです。
しかし、会社側が「病気療養(傷病欠勤)ではなく、本人の意思による有給休暇の消化である」として処理を進めたことで、結果として、労基法19条の適用を免れる外形が作り出されることとなりました。 実際、同社は後の公式回答等において「当時は休業や労災請求の申し出はなかった」との主張を維持しています。
結果として、この「合意に基づく有給休暇消化後の退職である」という会社側の説明が存在することで、 現場の労働行政は 「当事者間に退職日の争いがあるため直ちに法違反といえない」 として、独自の違法性判断を停止しました。
本来、強行法規である労働基準法第19条は客観的事実に基づき適用されるべきですが、行政が「当事者間の争い」を理由に判断を保留したことで、結果として企業の対応に対する公的評価が下されないまま処理が終結しています。
結論:「700日の労災認定」による前提の崩壊
住友生命が「当時は休業の申し出はなかった」と説明を維持しても、その前提は事後的な「労災認定」という客観的事実と決定的に矛盾しています。
労働基準監督署は、本件事案について、まさにこの診断書が返送された時期を含む 「2021年7月13日から700日間に及ぶ就労不能(休業補償給付)」 を、業務に起因する労働災害として公的に認定しています。
国家機関が「その期間は業務上負傷による客観的な就労不能期間であった」と確定させている以上、会社が行った「有休消化としての処理」と「診断書の返送」は、労働者の休業の実態と著しく乖離しています。 この会社の対応は、結果として労働基準法第19条(解雇制限)の適用を妨げる客観的状況を作り出しており、同社の労務管理の妥当性に重大な疑義を残す客観的記録となっています。