—— 自ら定めた「確認資料の提示要件」と実際の行政対応の乖離 ——

ハローワークは企業から提出された離職票をそのまま受理するわけではなく、本来、厳格な確認作業を行う義務を負っています。 厚生労働省(ハローワーク)が全国の事業主に向けて発行している公式指導文書 『離職理由に関する資料の提示について』 には、以下の通り明確なルールが記されています。

【ハローワークが事業主に求めている公式ルール】

  • 「正確を期するために離職理由に関する資料をハローワークに提示してください。」
  • 労働者の都合による退職(自己都合退職)の場合の確認資料:「退職願(写) 等」
  • 「不正受給を目的に虚偽の離職理由を届け出た事業主は(中略)詐欺罪等で刑事罰に処される場合があります。」

厚生労働省https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-hellowork/content/contents/001066999.pdf
リンク切れの場合:webArchive)

すなわち、会社が労働者を「自己都合退職」として処理し離職票を発行するためには、労働者本人の意思を示す客観的資料(退職願など)をハローワークに提示しなければならないというのが、行政自らが定めたルールです。

1. 公式ルールと実際の処理の不整合

本件事案において、住友生命は労働者からの「退職願・退職届」が一切存在しない(労働者が同意を保留している)状況下で、「自己都合退職」として離職票を発行しました。 これは上記のハローワーク公式ルールに照らし合わせれば、 「自己都合退職の確認に必須とされる確認資料(退職願)が存在しない届出」 となります。
これに対し、被災者(労働者)が 「離職願・届の類の提出はしていないのに自己都合とされている」と異議を申し立てた際、ハローワーク栃木の担当者は、客観的な事実確認や会社への資料提示要求を行うのではなく、労働者に対して次のように回答しました。

ハローワーク担当者の回答

「(会社側が)退職者と連絡がつかなかったからじゃないですか」

2. 結論:合理的な説明の不在と「判断の停止」

ハローワークは一般に向けて、自己都合退職とする場合には退職願の写しを提示するよう指導し、虚偽申告には罰則の対象となり得る旨を警告しています。 しかし本件においては、必須とされる確認資料が存在しない事実を労働者が直接指摘したにもかかわらず、ハローワーク担当者は法的な確認手続を行わず、「連絡がつかなかったからではないか」という推測に基づく回答で処理を進めました。

その後、被災者がハローワークに対し 「退職願は必ずしも必要な書類ではないとの理解でよいか。この扱いは住友生命への特別扱いか」 と矛盾を追及した際、ハローワーク側からこの問いに対する明確な回答や反論は示されませんでした。

行政自らが発行した文書に「自己都合退職には退職願(写)等が必要」と明記されている以上、「必ずしも必要ではない」と公に回答することは困難です。 自らが定めた要件を満たさない届出が受理され、その理由について労働者へ合理的な説明がなされないまま処理が進行したという経過は、当該行政機関におけるルールの運用と実態の間に、重大な機能不全が生じていることを示す客観的記録となっています。

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