担当者の直接対話回避が招いた「被災者の主張」の公文書化(逆説的記録)
管轄の栃木労働基準監督署における2022年8月15日以降の対応記録を精査すると、意思決定権限を持つ担当責任者(副署長)が直接の対話を回避し、窓口職員を通じた「伝言」形式へと対応を移行させている経過が確認できる。 しかし、この行政側の「対話からの逃避」は、結果として、行政にとって不都合な労働者側の法的指摘を、要約や黙殺を経ることなく、そのまま公文書(相談票)へ詳細に記録させるという逆説的な結果をもたらしている。
20221221労基署相談票
20230126労基署相談票
20230127労基署相談票
1. 副署長による直接対応の回避と「伝言」の発生
2023年1月に被災者が行った度重なる電話による監督指導の要求に対し、行政文書上は以下のように記録されている。
【2023年1月26日 労基署相談票】 「相談者から副署長宛に架電あり。本職が相談者に対し副署長が不在である旨を述べた。このとき、相談者は本職に対し自身の話を聞いて、記録に残してほしい旨を述べた。」20230126労基署相談票
【2023年1月27日 労基署相談票】 「再度の監督指導を求める内容であったが、対応の可否について折り返しの連絡を求められたため、副署長にその旨を伝えると回答した。」20230127労基署相談票
これらの記録が示す通り、実質的な判断を下す副署長が直接応対せず、窓口の担当職員が「副署長への伝言」として労働者の主張を聴取する運用がなされている。
2. 伝言形式が機能させた「主張の完全な固定化」
窓口職員は伝言として正確に記録を残す義務を負うため、この対応方式の変更により、労働者側の 極めて具体的かつ論理的な法的指摘が、行政側のフィルター(反論や打ち切り)にかけられることなく、そのまま相談票に書き込まれることとなった。 具体的には、以下の主張が公文書として固定化されている。
- 労働行政の機能不全の指摘:「栃木労働局は、障がい者虐待制度を理解していない。」「未払い賃金事案について、同意なしに一方的に打ち切られた。」労働局職業安定部の使用者による障害者虐待への対応
- 最新判例に基づく違法性の指摘:「京都地方裁判所にて、住友生命が賃金控除協定を結んでおらず控除した賃金は違法だとした判決が出ている。(中略)内勤者についても同様の状況なので対応をお願いしたい。」住友生命京都支社判例
- 不作為の理由開示要求:「対応できないようであれば、本省にその旨と理由をあげていただきたい。」
翌年度の2023年5月18日_栃木労働基準監督署副署長との電話へ
3. 結論:逃避が完成させた「標本」
仮に、副署長本人が直接電話に応対していたとすればどうなっていたか。 のらりくらりとした曖昧な回答でその場を煙に巻き、論点をはぐらかしていた可能性が高いと言えます。そうなっていれば、被災者側の詳細な判例指摘や不作為の追及は、行政側の都合の良いように要約・矮小化されるか、言葉巧みに流されてしまい、公文書にこれほど生々しく明確な形で記録されることはなかったと推認されます。
行政の責任者が「直接の説明と対峙」から逃れようと窓口職員を盾にした結果、かえって 「労働者が客観的判例を提示して指導を求めているにもかかわらず、行政が何ら実質的な対応を行わない」という『行政の不作為の完全な証拠』が、自らの手によって永久的な行政記録に刻み込まれる こととなった。この記録は、行政機関が説明責任を回避しようとした結果、自らの機能不全の証拠を自ら保全してしまうという、制度的欠陥の皮肉な仕組みを示している。