—— 行政の案内とメール履歴にみる会社側説明の不整合
住友生命は、本件退職処理について文書において 「合意退職は有効に成立していると判断しています」「自己都合退職と判断して発行申請したものです」 と主張しています。
しかし、当時のメール履歴や関係行政機関(役場・ハローワーク)に残された公的記録を時系列で確認すると、この会社側の主張と客観的事実との間に重大な不整合が存在します。 そこに記録されているのは、 「退職手続きが完了していない(書類が揃っていない)ことを自ら認識しながら処理を進めた企業」 と、結果として生じた雇用保険法の届出期限徒過状態に対して 「事実と異なる案内を行い、独自の事実確認権限を行使しなかった行政」 の対応経過です。
1. メール履歴等が示す離職票発行に至る時系列
離職票が発行されるまでの経過には、企業側の自己矛盾と行政側の機能不全を示す決定的な事実が刻まれています。
- 2021年7月27日【労働者による同意保留】 労働者は住友生命の総務部長に対し、「退職届等につきしましても、役所にご相談させていただいた後、回答をさせていただきたいと考えております」と退職手続きへの同意を明確に保留するメールを送信している。
- 2021年8月17日【会社が主張する退職日】 (※労働者からの「退職届」等の書類提出は一切ない状態)
- 2021年8月19日【会社による「手続き未了」の説明】 壬生町役場(国民健康保険担当)が住友生命小山支社へ退職日の確認の電話を実施。 会社側は役場に対し、「病気退職として処理を進めており、その処理に必要な書類がそろっていない」「退職日が8月17日よりさかのぼる可能性がある」「決定した際には壬生町に連絡する」 と回答。 この時点で、会社自身が第三者に対し、書類が揃っていないことを理由に退職時期が確定していないと明確に説明している。(貸与物に過ぎない社員証と健康保険証の返却をもって合意したという後日の主張と完全に矛盾する。)
- 2021年8月24日【会社からの遡及処理の通告】 住友生命から労働者へメール。「9月2日までの返送がなかった場合は、8月17日付で退職手続きを行う」と未来に向けた条件付きの通告を行う。事後的に指定された退職日
- 2021年9月14日【ハローワーク栃木による「実態と異なる案内」】 ハローワーク栃木の担当者から労働者へ電話があり、「8月17日退職で、9月10日に離職票が発行されたので郵送を待つように」 と案内される。
- 2021年9月17日【労働者の照会による事実関係の確認】 書類が届かないことを不審に思った被災者が栃木労働局へ相談し、本社管轄の「ハローワーク大阪東」へ直接連絡。大阪東からの指示により、労働者自ら「離職票再交付申請」の手続きを行う。
- 2021年9月21日【1ヶ月以上遅延した「新規発行」の確定】 労働者の再交付申請手続きの結果、ハローワーク栃木が案内した「9月10日に発行済み」という事実は存在せず、実際には退職日(8月17日)から1か月以上が経過した9月21日になって、初めてシステム上で「初回発行(新規)」として発行された という事実が確定した。
2. 確定した「2つの制度的課題」と行政の不作為
上記の時系列記録は、企業と行政が犯した以下の極めて重大な法令違反および不作為を示しています。
課題①:雇用保険法第7条に関する客観的違反状態
雇用保険法第7条は、事業主に対して「離職の翌日から10日以内」の離職票(資格喪失届等)の提出を厳格に義務付けており、これに違反した場合は同法第83条に基づく罰則の対象となり得ます。会社側は「連絡が取れなかったためやむを得ない事情だ」と説明していますが、9月21日の「新規発行」というシステム記録が存在する以上、客観的に明確な法令違反状態が発生していた事実は動かせません。
雇用保険法第7条
雇用保険法第7条違反(離職票の提出遅延)
課題②:事実確認の留保と「実態と異なる案内」
ハローワークは、こうした届出の遅延や、確認資料(退職願)が存在しない「自己都合退職」の申請に対して、法第76条(報告等命令)や第79条(立入検査)という調査権限を有しています。本来であれば、ハローワーク栃木はこの権限を行使し、長期間遅れて提出された書類や退職届がない状態について企業へ指導・事実確認を行うことが可能な立場にありました。
しかし、ハローワーク栃木が実際に行ったのは、事実確認ではなく 「9月10日に発行済みである」という実態と異なる案内を行い、労働者に手続の完了を伝える対応 でした。その後、労働者自らの手続によって未発行の事実が判明したにもかかわらず、ハローワーク栃木は退職届がない状態での自己都合退職処理について 「退職者と連絡がつかなかったからではないか」 と推測による見解を示すに留まり、企業側の処理をそのまま受理し進行させました。
結論
住友生命は文書において、退職処理や離職票の発行について 「合意退職は有効に成立していると判断しています」「自己都合退職と判断して発行申請したものです」 と主張し、自らの処理の正当性を繰り返しています。 一方で、たしかに本件において、1ヶ月以上の届出遅延等に対して行政側から企業へ指導や処分が行われた公的記録は存在しません。
しかし、客観的な公的記録とシステム履歴が示す経過は、 「企業が書類不備(手続未了)を自ら認めていながらも一方的な退職処理を進め、労働行政が自らの事実確認権限を行使せず、事実と異なる説明まで用いて結果的に企業の不適切な処理プロセスを通過(容認)させた」 という、労働保護行政における深刻な機能不全の証明となっています。